Philosophica Mahāyāna
Buddhica Monograph Series
Online version: ISSN 2435-3515 Print version: ISSN 2434-8465
発刊の辞
中央学術研究所は1994-2012年に叢書Philologica Asiatica、2013-2017年に叢書Philosophica Asiaticaの合計32冊を公刊してきました。上記の叢書は、アジア圏の諸思想や宗教の聖典に対する文献学的研究の基盤整備のために、微力ながら資そうと努力してきた成果です。初期仏教聖典、ジャイナ教聖典及び文学、初期大乗仏教経典の語彙・詩脚索引、写本カタログ等を中心に、2017年までに32冊を発行し、幸い斯界に好評を得てまいりました。
さてこの間、私たちは二十一世紀を迎え、今年の5月には新天皇の即位とともに新元号が制定され、新しい時代の幕が開けました。新時代に入ったとはいえ、現実には諸問題を抱え、解決困難の様相を呈しています。私たちは今こそ改めて先哲の教えに耳を傾け、誠実な知の営みを積み重ね、普遍的な価値に心を置き、創造的な未来に採るべき指針を心新たに探るべきだと思います。
当研究所は広く思想・文化・科学等との関連のもとに、宗教、特に仏教を研究し、以って有用な人材を育成し、人類の文化と世界平和への寄与を目的として、政治・経済・社会・文化等のあらゆる分野の学識経験者の協力のもと、“基礎研究”および“今日の課題”に方向を与えながら、さまざま研究活動を展開することを理念に掲げ、立正佼成会の付置研究所として設立しました。おかげさまで、本年で50周年を迎えます。
立正佼成会は1938年に開祖庭野日敬・脇祖長沼妙佼によって創立された法華三部経を所依の経典とする在家仏教教団です。家庭や職場、地域社会の中において釈尊の教えを生かし、平和な世界を築いていきたいと願う人々の尽力によって、昨年に創立80周年を迎えることができました。
宗教の中でも仏教、特に法華経に示された世界平和に一歩でも近づけるよう、法華経を中心とした大乗仏典を厳密な文献学的手法による思想内容の解明を目指し、成果の一端を将来の仏教思想研究の発展のため広く斯界に提供する所存でございます。
本叢書Philosophica Mahāyāna Buddhicaが東洋の先哲の足跡に倣い、問題解決の手掛かりを得ようとする諸賢の研究に資して、現代社会の一隅を照らす一灯となるよう願い、これを発刊の辞といたします。
2019年11月15日